ドキュメンタリー映画「パリ・オペラ座のすべて」の紹介

エトワールの聖域をフレデリック・ワイズマン監督が完全密着!

フランス「ブルボン朝」の最盛期に絶対君主制を確立し「太陽王」と呼ばれたルイ14世。彼が絶対的な権力と情熱を注いで作り上げたのが、以降350年にわたりフランス文化の中心となっている世界最古のバレエ団「パリ・オペラ座」です。

そのベールに包まれた「聖域」をドキュメンタリー界の巨匠と評されるフレデリック・ワイズマン監督が84日間にわたって完全密着したのが、映画「パリ・オペラ座のすべて」です。

ニコラ・ル・リッシュ、アニエス・ルスチュ、マチュー・ガニオ、をはじめとするエトワール(星の意=トップダンサー)総出演の豪華さは勿論、普段は見ることのできない厳しいレッスンの模様や特別インタビュー、1500名のスタッフが携わる作品の捜索過程、資金確保のための広報活動や経営戦略など、企業としてのオペラ座も描き出しており、大変興味深い作品となっています。

世界最古のバレエ団として、最高峰に君臨し続けてきたパリ・オペラ座ですが、その実態はほとんど知られていません。羽生善治さんが身を置く将棋界には、全国から天才少年だけを選抜したプロの養成機関「奨励会」というシステムが存在しますが、オペラ座も入団を許されるのは、小さい頃から英才教育を施され、熾烈な競争を勝ち上がってきた一握りのエリートのみです。

入団後も数多のライバル達と凌ぎを削りながら、いくつもの試験を突破していかなければダンサーとしての地位は上昇しません。その頂点に立つのが、エトワール(星の意=輝ける称号)と呼ばれるトップダンサーです。350年に渡って時代の荒波を乗り越えてきたパリ・オペラ座は一体どのように運営されているのか? トップダンサー達の華麗な舞台の裏側にあるストイックな生活とは? 荘厳な建物の内部には何があるのか? 関係者以外誰の目にも触れることのなかったパリ・オペラ座の素顔を明かすために、ワイズマン監督は聖域に足を踏み入れます。

そこに映し出されるのは、ニコラ・ル・リッシュ、マチュー・ガニオ、アニエス・ルテステュに代表されるエトワールの厳しい練習風景、そしてセモリナ粉を主食とする食事風景まで、彼らの日常生活の全て。BGMやナレーションなどの演出的要素の一切を排除したインタビュー風景は、撮影空間そのものをリアルに映し出し、圧倒的な臨場感を観る者にもたらしています。

また、舞台の袖から捉えた公演の数々も見逃せません。「ロミオとジュリエット」、「くるみ割り人形」、「パキータ」、「メディアの夢」、「ジェニュス」など、本作品の撮影時期に上演過程にあった演目の練習風景から本番までを、現地でなければ味わえない臨場感と迫力で伝えます。さらに、カメラが捉えるのはダンサーだけではありません。衣装の素材の染色から縫いつけまでを全て手作業で続ける衣装担当、振付家、コーチ、経営をめぐる会議、有力なスポンサー獲得のための広報活動、ダンサーたちとの待遇をめぐる交渉(この世界はストライキが多い)など、企業としてのパリ・オペラ座の顔も赤裸々に明かされていきます。原題は「la danse」。本編160分。